2008.06.29(Sun)
雪ちゃんが寝込んだ次の日。私は健一と一を沢へ誘った。半ば獣道に成り果てた小道に生えた背の丈ほどある草木を掻き分けながらずんずん進んでいくと目当ての沢が顔をのぞかせた
私たちの村は海沿いなので沢といってもそこはどちらかというと河口といった場所で。小さな入り江にも見える不思議な場所であった
対岸へは石を渡っていく。泳げない距離ではなくても腰まで濡れてしまうので対岸の先に用があるとき、私たちは大抵飛び石を使っていた
じっと目を凝らすと上流から流れる清水が小さな小石を運んでくる。たまに小魚に紛れて大きい魚も視界をよこぎる
この沢は当時の私たちのいわゆる秘密基地というやつで。いつだったか小春ちゃんが見つけてきたのだ
普段なら一が小春ちゃんの手を引いて。私が雪ちゃんの手を引き、健一が先導するのだが、今日は雪ちゃんはおろか小春ちゃんの姿もなかった。
一は岸に腰掛けて沢の水へ足を浸していた。健一は飛び石を使って向こう岸へ渡っているところだった。向こう岸の竹やぶの中に彼のつり道具やタモが隠されているのです
私は一番近くの大きなクスの木の根元に座りました。普段ここに座るのは病弱な雪ちゃんであり。私はというと健一と一緒に競うように沢へ飛び込むのです
「一・・・」
私は声をかけましたが続く言葉が喉でつかえて結局出てきませんでした
「馬鹿だって言うんだろう?」
「いや・・・・」
一が足を上げます。すると水がパシャリと音を立てて飛び上がり、光の塊になってから沢へ戻っていきました
一は気にしているのです。自分のせいで雪ちゃんの体が悪くなるのだと。
「あんとき、俺が雪ちゃんを無理やり誘わなければきっと・・・・。」
それは雪ちゃんが越してきてすぐのことでした。
歳の近い女の子がやってきたと聞いて小春ちゃんが飛び出すように雪ちゃんへ会いに行ったのです
一は兄として小春ちゃんを追いかけます。すると必然的に場に居合わせた私たちもついていくことになるのでした
あれは秋と冬の間といった時期だったと記憶しています。
「すごい豪邸!」
一足先についた小春ちゃんが興奮して飛び上がったりなぞしていた。走った直後のため頬と鼻が桃色に色づいていた
「小春!勝手に走っちゃ・・・。」
後から追いついた健一と私も肩で息をしてぜぇぜぇとやっていた。息を吐くたびに白い煙が龍の吐く炎のように溢れた。
ひざに手をついた健一は首にかけていたマフラーがだらしなくダランと凍えた地面に垂れた
「翔ちゃん早いなぁ。敵わない。」
「いや、同着だろう」
そのとき私は見たのです。一が光を帯びているところを
冬の儚い木々の木漏れ日を浴びて一と屋敷が光っていました。光り輝く一が一心に捕らえるさきに雪ちゃんがいたのです
洋式の屋敷なのでしょう。庭に植えられた椛の木の根元でしゃがみこんでいた彼女は上目遣いに振り返り。小首をかしげていました
あのときもたしか季節外れな青いリボンで装飾した麦藁帽をかぶっていたはずです
「こんにちは」
雷に打たれたように一が何やら口ごもった。が、小春ちゃんの大きな挨拶にかき消されてしまった
「こ、ち・・・。こん・・・わ」
「こんにちはー」
一が恥ずかしいほど動揺しているのが手に取るように分かりました。しきりに服の裾をつかんだり放したりしていたのです
「お名前は?何をしていたの?何年生?」
「小春!そんな次から次に」
「雪よ。今、この木に名札をつけてあげてたの。ほら」
雪ちゃんが立ち上がると、彼女の影になっていた椛の根元には『モミジ』と小さな立て札が刺してありました。
雪ちゃんは淡い水色のコートに芝生の小さな葉を払うと爽やかな笑顔を向けてくれた
「どうぞ、あがって。私越してきたばかりだから、いろいろここについて教えてほしいし。何より初めてのお客様だから」
私と健一は妙な居心地の悪さを感じていました。どんな朴念仁が見ても分かるでしょう。一は雪ちゃんに見惚れてしまったのです。
雪ちゃんが私たちに近づいて「よいしょ!」と自分の背の二倍はあろうかという鉄格子の門を淡い水色の手袋をはめた小さな椛のような手で引いてくれたのですが、何分雪ちゃんなのでうんともすんとも言わず微塵も動かなかったのです
雪ちゃんは困惑している私たちに恥ずかしそうに笑いました。
服と彼女の頬の色とが対照的で、どこかの西洋絵画のように美しく、途端に私は彼女のコート、手袋、吐き出される白い息。すべてが神の加護のかかったように愛しくなりました
掃き溜めの鶴の意味を私はこのとき初めて体感したのです。
「て、手伝います!」
勢い良く一が飛び出すと何を思ったのか鉄の門を思い切り引きました。
「え・・・。」
雪ちゃんが唖然としているのも気付かず。一は一生懸命引いたのでした。
しばらくして自分の失態に気付いた一の大慌てな後姿と、雪ちゃんの驚いた顔はあの輝かしい日々から20年たった今でも。そしてこれからも忘れることはないでしょう
『あとがき』
はい、誰か読んでるのか?読んでいるのかーーー!?
読んでる人ー。挙手!
結果が楽しみですね (ぇ
先にお知らせです。当初小説のタイトルを『アンダーテイカー』としていましたが、なんか気に入らないので変えます。といっても決まってないのでしばらくは名無しなんでどうかよろしく。
さて、間食編もさっさと終わらせたいですね。回想シーンなんて早く終わらせたいのが正直なところ
ちなみに皆さんが思っている通り雪ちゃんはお嬢様です。俗に言うお嬢様というやつです
体が弱い雪ちゃんは都会から療養のためこの海沿いの村へやってきました〜
一は彼女に一目ぼれしちゃうわけですが、空回りして大惨事を引き起こすんですね。
ていうか大体予想つくんじゃないですか?
雪ちゃんがどうなるかとかさ!?
というわけで間食編も中盤です。本筋ではまだ序盤なのにいいのかね。コレ
ていうかアレですよ?本筋とは関係ないですからね。コレ。別に読まなくても本筋だけ読めば大体の流れ分かっちゃいますから!
いや!嘘です!嘘じゃないけど!!読んでください!お願い。読んで (泣
では、ここまで読んでいただいてありがとうございます。感激の極みです。いや本当に
皆様の暇つぶしになれれば幸いです。
つーか、あとがき長っ!!



